遺言書で実現できること

遺言書を作るとこんな事が実現できます


他にも叶えられる事は沢山ありますが、実現するには正しく遺言書を作成する必要があります。

まずは遺言書について知ってください。

作成するにはタイムリミットがある?!

遺言はその人の最終の「意思表示」について、死後に効力を生じさせる制度です。

意思表示である以上、「遺言能力」が必要とされます。

民法963条にも「遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。」とされています。

民法961条では15歳以上であれば遺言能力があると定められていますので、15歳以上であれば誰でも

遺言書を作成することができる事になりますが「遺言能力」とは遺言の内容を理解し、その結果どうなるか、

どのような影響があるかを認識できる能力とされています。

現在、体も頭も元気な方はまだまだ先の話しでしょう。とお考えだと思います。

それでは一体何歳になったら「遺言能力」がなくなってしまうのでしょうか。

厚生労働省が令和5年に発表した「簡易生命表」※1によると平均寿命は女性 87.09歳 男性81.05歳です。

日本人の平均寿命はWHOが発表している2023年版で位です。

では健康寿命はどうでしょう。

内閣府発表「令和5年版 高齢社会白書(全体版)」※2によると令和元年時点で

女性 75.38歳 男性 72.68歳となっています。

平均寿命との開きがありますね。日本人は長生きだから80歳になったら・・・

なんて考えている方も多いのではないのでしょうか。

もちろん、90歳を過ぎてもとてもしっかりされてい方もいます。

人それぞれですから、先のことを予知することはできませんが、

健康寿命を一つの目安として遅くとも72歳ころまでを目標に遺言書を作成してみてはいかがでしょうか。

遺言書は何度でも書き直すことができます。

”転ばぬ先の杖” 早くつくることにデメリットはありません。


※1 令和4年簡易生命表の概況 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life22/index.html

※2 令和5年版 高齢社会白書(全体版)内閣府 https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2023/zenbun/pdf/1s2s_02-1.pdf

書けることと書けないことがある?!

正確にいうと書いて法的効力が発生することと発生しないことがあります。

基本的に遺言書にかける(法的効力が発生する)のは「財産(遺産)」「人」に関することです。


財産(遺産)に関すること

相続分の指定(民法902条)「遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。」

遺言者は法定相続分とは違った割合で財産の分け方を指定することができます。

例えば、相続人が奥さんと子供2人の場合、法定相続分では奥さん2分の1、子供4分の1ずつとなりますが

奥さんの今後の生活のことを考え奥さん3分の2、子供6分の1ずつ。とすることも可能です。


遺贈(民法964条)「遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。」

相続人ではない人や団体に遺産を渡すことを「遺贈」と言います。

内縁関係にある配偶者は相続人ではありません。

ということはつまり、遺言書がないと遺産を受け取ることはできません。

遺言書で、今まで一緒に人生を歩んできたパートナーに遺産を贈与(遺贈)することを表示しておけば

パートナーの生活を守ることができます。

また、思いのある団体 保護権活動をしている団体、遺児を支援している団体などへ寄付をすることも可能です。

尚、遺贈をする場合は遺言執行者の指定必須となることに注意が必要です。


人に関すること

未成年後見人の指定(民法839条)「未成年者に対して最後に親権を行う者は、遺言で、未成年後見人を指定することができる。ただし、管理権を有しない者は、この限りでない。」

親権を持つ親が、自分の死後、未成年者の子どもを託す相手を指定(未成年後見人の指定)することができます。

複数指定することも、個人だけではなく法人も指定することができます。

自分にもしものことがあった時に、未成年後見人を指定しておくことで遺された子どもを守る事ができます。


遺言執行者の指定(民法1006条)「遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。」

自分が書いた遺言の内容を実現してくれる手続きをする人を指定できます。

遺言執行者の指定がないと結局相続人全員で手続きをしなければいけなくなったり、遺言書だけで手続きできるはずのものができなくなってしまい

遺言書を書いた意味がなくなってしまいます。

遺言執行者は必ず指定しましょう。

また、遺言執行者は相続人でもなることができますが、金融機関によっては遺言執行者が相続人の場合、

相続人全員の印鑑証明書と実印が必要となる場合もありますので、遺言執行者は専門家へ依頼することをおすすめします。


遺言認知(民法781条2項)「認知は、遺言によっても、することができる。」

婚姻関係にない男女の間に生まれた子どもは、父親が子どもを認知することによって法的な親子関係が生じ

子どもが財産を相続することができるようになります。

生前に認知することが難しい場合は、遺言によって認知することも可能です。


祭祀主催者の指定(民法897条)「被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。」

祭祀主催者とは先祖のお墓を守り供養するひとのことをいいます。

自分が守ってきた先祖代々のお墓をきちんとこの先も守って言って欲しい。

祭祀主催者を指定することによってそんな思いを遺言書でかたちにすることができます。

民法で定められているくらい日本人にとって先祖のお墓を守り供養することは大事なことなんですね。

通常は、喪主をして欲しい人を指定することが多いようです。

遺言書で指定しておくことによって葬儀の手配などもスムーズになりますね。


推定相続人の廃除(民法893条)「被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。」

遺言書で特定の相続人に財産を相続させないようにすることができます。

ただし、相続人の廃除は相続人にとって大きな不利益となります。ただ単にその相続人が嫌いだからという理由では認められません。

日常的に暴力を受けていた、暴言を吐かれていた、経済的に大きな負担を強いられていたなど

「排除しても無理はない」と思われる理由が必要です。

そのような理由がなく、特定の相続人に財産を相続させたくない場合は、相続分の指定で対策をするのが良いかもしれません。


以上が遺言書に書くことによって法的効力が発生することです。

では、法的効力が発生しないこととは何でしょう。


法的効力が発生しないこと

・お葬式の方法の指定

 例えば、お葬式は盛大に執り行い遺骨は海へ散骨するように など

・婚姻や縁組の指定

 例えば、長女は〇〇さんの次男と結婚するように など

これらは遺言書に書いても法的効力は発生しませんので、相続人が必ず守らなければいけないという事にはなりません。

付言事項として書くことは可能です。

例えば、付言事項として「残された家族は私の相続でもめる事がないように、これからも仲良く暮らしてください。」と書くことは

遺された人へ思いを伝えることとなり、遺言を書いた意味を理解してもらいやすくなると思います。